私達の創る世界
〜星空の下で幸福に暮らす〜

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初版 2024年12月25日

更新 2025年1月9日

 

「星空の下で幸福に暮らす」

 

1. ビジョン

◇ 人類誕生以来の「星空の下で幸福に暮らす権利(生き方)」を取り戻す

◇ 公開天文台すら不要となるような「宇宙と人間がつながる世界」を創る

 

1−1. 失われつつある星空

人類が地球上に誕生して以来数百万年、夜空にはいつも星が輝いていました。

 

その長い年月のほとんどは、焚き火を囲んで寝起きする野外の生活でした。数千年前に、家の中で暮らすようになっても、戸外に出れば夜空には満天の星があり、それが人間の自然な生活の一部でした。

 

それが、わずか数世紀前に始まった近代化と資本主義の世界によって劇的な変化が起こりました。夜空は人工光で明るくなって星は消え始め、現代においては、天の川を自分の目で見ることができる人の数は世界でも半分ほど、日本では4分の1ほどに減ってしまいました。

 

人間にとって、そして生物にとっても生得の環境であった星空。

人間にとって社会的な共有資産(コモンズ)でもあった星空を奪われていることは、まさに命ある人間としての幸福(ウェルビーイング)が奪われていく、そんな現代という時代を象徴する一つの現象と言えるのではないでしょうか。星空が見えるような暗い夜を過ごせなくなったことと、人々の心身の健康が実際に深く蝕まれつつあることの間には強い相関関係があることを多数の研究や報告事例が示し始めています。しかし、多くの人々はそのことにまだ気がついていません。

 

1−2. 生得の権利を奪ったもの

ではいったい、誰がこの生得の権利を奪ったのでしょうか。

幸せと健康を願い、それを約束してくれると信じてきた「豊かさの幻想」に、今私たちは気づきつつあります。

 

人間の欲望をかなえることが豊かさである、物質的に豊かになることが生活や心の豊かさを実現すると、私たちは思い込んできました。しかし、所有と消費をあおる社会の在り方や、それを良しとする私たち自身の生き方が、他ならぬ私たちの幸福の権利を奪っていたことに気付き、一部の人々はその思い込みから目覚め行動をはじめました。

 

私たちは、「星空の下で幸福に暮らす権利 」を、人類誕生の時から持っています。

 

それは、単に「光害のない暗い夜空」を取り戻す権利、ということではありません。たしかに、過剰な商業・消費主義による無用な光で溢れている現代の夜の世界を、適切な暗さに戻すことは、生命にとって生物学的にも大きな意味があります。

しかし、それと同様に重要なことは、「星が見えなくなった星空」に象徴されるように、すべてのものがデジタル化され、絶えず何かと比較され、そして何かを達成しなければと追い立てるような「今の社会のあり方」を見直し、「心静かで満ち足りた幸福な生活」を取り戻す権利がある、ということなのです。

すなわち、現代の文明のあり方を見つめ直し、私たちの生き方を変えることで、この奪われていた権利を取り戻すことが、今や私たちが直面する大きな課題となっているのです。

 

1−3. プラネタリーヘルスとウェルビーイング

「人類による自己中心的な過干渉を廃し、人類を含む地球上の自然が将来にわたり継続できる調和の取れた地球環境(プラネタリーヘルス)がもたらす美しい星空」と、「人間として幸福に暮らすこと(ウェルビーイング)」との間には、私たちの気がつかなかった関係・つながりが、たしかに存在しています。

そして何より、宇宙と私たち人間は、とても深いところで一つにつながり合い、宇宙は、けっして単なる鑑賞や客観的観察の対象ではありません。私たち人間をその懐に抱く母なる大地である地球も、宇宙の一部であり、またあらゆる存在と同じように、私たち人間も宇宙の一部なのです。

 

1−4. 星空からの贈り物

しかしながら、そもそも星が見える夜空や自然生態系も、そして人間が人間らしく幸福に暮らす社会性も、元をたどれば人間が自分の力で勝ち取った権利ではありません。

それは、所有する”権利”のようなものではなく、人類が生まれた時から与えられていた、かけがえのない自然や生態系からの贈り物、すなわち「星空からの贈り物」だったのです。

古来人間は、そうした自然の恵みを受け取りながら、そこに「大いなる畏敬の念と深い感謝の気持ち」を抱きつつ、自然と人間が将来にわたり継続できる調和の取れた生活圏を作る智慧を持っていました。

しかし、傲慢になった近代的自我は、それを当然の権利だと思い込み、自然環境のみならず自分たち人間自身をも単なる利用価値として消費しようとした挙げ句の果てに、何よりも大切だった人間性を失ってしまい、この便利でありながらも殺伐とした世界が作られてしまったのです。

 

1−5. 新たな世界を創る

そこで、近代的な科学技術を基礎に造られる社会と、自然を尊重し共に生きる古来の人間の生き方が、融合し両立する、そのような新たな文化・文明を実現することが、現代に生きる私たちの最も重要な課題となっているのではないでしょうか。

私たち一人ひとりが、星空の下で暮らし宇宙とのつながりを意識し、何気ない日常の中でそれを実感することで、人智を超えた壮大な世界に私たちが(その一部として)生きていることを、みなが当たり前のこととして知る世界を創っていけるでしょう。

 

1−6. 公開天文台がその役割を終える

ところで、もともと天文台は、星の世界を観測し、知り得た知識を伝えることで人々の世界観・宇宙観をつちかい、そこに社会のあり方と人間の生きる意味をつむぐことが目的でした。

ところが近代以降、合理的で科学的な宇宙像を提供することを重視するあまり、そこに生きている人間自身の意味を軽んじ、対象となる物質世界の探究のみにいそしんでいなかったでしょうか。そして、所有するモノによってのみ人々の豊かさを計る今の世界に、結果的にくみしてしまっていたのかもしれません。

しかし、このように人々が「星空の下で幸福に暮らす」地球がよみがえることによって、ちょうど病気が無くなることで、病気の無い社会を作ることが目的であった病院がその役目を終えるように、現在の公開天文台もその歴史的役割を終えて、自然に不要なものになっていくかも知れません。そして、人々と宇宙のより深いつながりをもたらす新たな場が生まれ、その役割を担っていくのではないでしょうか。

 

1−7.  提唱者の願い

こうして、宇宙と人間がつながった新たな世界がおのずから創られ、地球と人間は、本来あるべき成長の段階へと回帰して、新たな一歩を踏み出すことになるでしょう。

そうした調和の取れた幸福な人間社会(ウェルビーイング)と、健全な地球環境(プラネタリーヘルス)をみんなで実現し、支えていくこと。

そのような想いに共感する仲間たちと志を共有し、それぞれの一歩を踏み出し、共にその歩みを続けていけることを、私たちは心から願ってやみません。

 

有志一同

 

2. アジェンダ:行動指針

どうすれば、近代的な科学技術を基礎に造られる社会と、自然を尊重し共に生きる古来の人間の生き方が、融合し両立する、そのような新たな文化・文明を実現することが出来るのでしょうか。

どうすれば、星空の下で暮らし宇宙とのつながりを感じることによって、人智を超えた壮大な世界に私たちが生きていることを、みなが当たり前のこととして知る世界を創れるのでしょうか。

  1. そのためには、まず、私たちが失ってしまった「星空の下で幸福に暮らす」生き方や世界とは何であったのかを、謙虚に問い直すことが不可欠な前提となるでしょう。
  2. 次に、それを奪ってしまった現代の文明や文化、そして他ならぬ自分たち自身に対して、あらためてそれらが自然からの賜物であり、また人間の一部であり、人類生得の「権利」であったことの正当性を主張することが必要です。
  3. そして今、何より私たち自身の努力によって、再度これらの恩恵がどこから届けられていたのかに体験的に気づき、その実体験を伴った感謝の気持ちによって、調和の取れた社会と地球環境を取り戻す努力を始めなければなりません。
  4. しかし、それだけでは十分とは言えないのです。
    万有引力を発見したニュートンは、かつて言いました。
    「私は、真理の大海を前に、海辺で遊んでいる子どものようなものだ。」
    永遠に人類に授けられている「星空・天然自然からの贈り物」に気づくことによって初めて生まれる、生きとし生けるもの、さらには物言わぬ万物にさえ捧げられる「畏敬の念と感謝」。
  5. そして、人間・社会はこの自然からの贈り物から始まり、今でも人間・社会のあらゆる活動はそうした贈り物から成り立っているという「気づきの体験」を、すべての人々と社会生活の中で感謝とともに分かち合い、互いに贈りあい、体験と感謝の贈与のリレーをつないでいくこと。そのような社会を創ることによって、次なる新たな文化・文明が自然と形作られていく一助となることでしょう。
    それが叶えられた世界では、きっと人々は夜になるとごく普通に星空を見上げ、それを楽しむための天文知識・技術・深い情操を、普通に持ち合わせているはずです。
    再び、私たちはみな宇宙の一部であるという宇宙観(コスモロジー)を、現代の知識を伴った「大いなる畏怖と心からの感謝」の体験とともに誰もが持ち合わせており、わざわざ権利として主張する必要もなくなる、そんな世界を私たちは創っていきたいのです。

 

有志一同

 

3. ムーブメントへの参加方法

私たちは、これらのビジョンやアジェンダに沿って、以下のことを実践していきます。

  1. 個人ーそれぞれの生活の場で、個人的に実践する
  2. 団体ー個別の具体的団体活動に、参加し実践していく
  3. ムーブメントー個別の活動をつないで、ムーブメントを広げていく

 

4. 南阿蘇ルナ天文台の参加表明

私たち南阿蘇ルナ天文台(Luna株式会社)は、その企業理念にしたがって、『「星空の下で幸福に暮らす」ビジョン&アジェンダ』を共同で提唱し、またそれに賛同する団体の一つとして、活動を具体的に実践し、ムーブメントを推進していきます。

 

Luna株式会社 理念

 

人類は、誕生以来星空を見上げ、人智を超えた宇宙に畏敬の念をいだきつつ

多くの生命が織りなす地球環境の恵みに感謝しながら、生きてきた。

私たちは、この宇宙や大地とのつながりを意識して暮らすことが

人びとの人生の質(Quality of Human Life)をより高めて

幸福 (Well-Being )の度合いをさらに深めることを知り

その体験・創発の場の、創造と共有を通して

さまざまな社会課題の解決に取り組み

新たな文化・社会を作るために

ここに集まり、行動する。